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量子技術を支える人材育成のためのオンライン技術教育カリキュラムを模索して行きたい

 量子技術には,日本の次世代産業への展開も期待されています。量子技術の発展には量子科学の支えが不可欠ですが,例えば,科学実験での再現性の割合は,産業界の工学実験での歩留まり率となり,さらに高めて行く技術も求められます。量子情報デバイスでも,量子科学から量子技術への移行期では,歩留まり率を一例として,磨くべき色々な技術があります。科学は普遍的真実を探求しますが,技術には人間の「技」と「術」が求められ,人間側の「腕」すなわち技能を上げる必要があり,「技術を磨く」とは「腕を磨く」ことを意味する場面が多々あります。そのために,教育は重要で,特に「実習」は不可欠となります。量子技術高等教育拠点が提供する教材はオンラインが中心ですので,オンラインで腕を磨くための実習の教材をどう構築するのかが大きな問題だとも感じています。


 九州大学の計算機アーキテクチャの研究室で学ぶ学生は,ハードウェア記述言語で回路のRTL設計をし,それを論理合成に通し,ゲートレベルのネットリストを作成し,レイアウトして実際に走るプロセッサを設計する実習があります。量子計算機アーキテクチャに関するオンライン実習は現段階では不可能でしょうが,古典計算機アーキテクチャに関しては,Raspberry Piなどという便利なツールも出現し,これを使い各個人が自宅で計算機アーキテクチャを学べる時代にもなっています。現在の技術を駆使し,オンライン実習の可能性を模索し,量子技術高等教育拠点のオンライン教育で受講生が腕を磨くためのカリキュラムの「技」と「術」を考え提供して行ければと考えています。


廣川 真男 教授
九州大学大学院システム情報科学研究院
量子コンピューティングシステム研究センター 副センター長